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03/21/2005

【映画】『ホワイトアウト』 だから良くも悪くもB級映画なんだって

どうでもいいと言えば、どうでもいいことのなのだが、やはり気になって仕方がない。『ホワイトアウト』に対する一部の奇妙な評価がだ。

僕は『ホワイトアウト』をよく出来た大傑作だとは思っていない。ただその割には結構楽しんで、見終わった後は「何だ、一応入場料分の価値はあるじゃないか」と満足した。とは言え「この映画を断固擁護する! 貶す奴はオレが相手だ!」と肩入れするような思い入れは、さらさらない。あくまでも「入場料分は楽しませていただきました」というだけのドライな関係だ。

だが「これだから日本映画は…」とか「日本映画もついにここまで来たか」とか、まるで『ホワイトアウト』が日本映画の代表格、明日の日本映画の運命を背負っているかのごとき数々の言説には、やはり違和感を感じずにはいられない。こんな「最初からB級とわかりきってる映画」に、みんな一体何を期待しているんだろう? 何を過剰反応したり、過大評価したりしているんだろう?

何しろこれは誰が見ても『ダイ・ハード』のもろパクリ…と言うよりほとんど著作権無視のリメイク(笑)ではないか。しかも監督は映画演出は初めて。さらに製作費は、このとんでもない内容に対して「たったの10億円」。そのような条件下で誰もがうなるようなA級の超娯楽大作が出来ると思う、その感覚が僕には信じられない。もちろん絶対にありえないとは言えないけれど、上記の要素を鑑みれば、その可能性が極めて低いことは明らかではないか。

特に重視したいのは、その製作費の安さだ。他の映画ならいざしらず、あの殺人的ロケーション現場では、ただカメラを回すだけ(そこにこぎつけるまで)で湯水のごとく金が出ていくことくらい、素人でもわかるだろう。つまり内容と製作費のバランスという観点から言えば、この映画は全然大作でも何でもないのだ。内容に見合った実質製作費
(こういうの、何か適切な経済専門用語があるのだろうか?)としては、おそらく『顔』や『雨あがる』あたりの方がよほど余裕があったのではなかろうか? 少なくともあの2作には「もうちょっと製作費があったら、こんな面白い画面が撮れたのに(=製作費がなかったからこんなしょぼい画面や展開になったんだろうな〜)と思えるシーンは、ほとんどなかった。

確かに若松監督(not孝二)の演出に才気を感じることはできない。だが幾つかの評に見受けられる「こんなシーンが見たかった」「ここをああすれば良かったのに」といった不満の幾つかは、「きっとそうしたかったのだろうが、製作費の関係で無理だった」と推測できるものだ。
もしこの内容をハリウッドで映画化したら、原作にそんなシーンがあろうがなかろうが(実際にはない)、テロリストがデモンストレーションのためにある程度の水を放水し、それによって下流の村が押し流されるスペクタクルが、始まってから40分あたりで入ったことだろう。そのニュースが伝わって、下流の都市がパニック状態になるシーンも入ったかもしれない。そのような描写があれば、後半のサスペンスは格段に盛り上がってくる。きっと誰もがそれをやりたかったことだろう。
だが出来るはずがない。何しろこの映画の製作費は「たったの10億円」だからだ。村が押し流されるスペクタクルなど撮ったら、それだけで製作費の半分が吹き飛んでしまう(笑)。その事情を考えれば、この作品のスペクタクルな見せ場が限られたものになるのは当然のことだ。最後にズラズラと並んだ製作関係者(社)の名前とあわせ(つまりそれだけ口出しする人間が多かったということ)、「この責任を全部監督の演出力に押しつけたら、さすがに可哀想だろう」と思わずにはいられない。

「製作費不足は製作者側の問題であって、観客にそんなことは関係ない」という意見もあろう。しかしその正論を吐ける人は、この映画を「日本映画の超大作」という先入観なしで見られた人だけだ。そんな観客がはたして何人いることやら。僕から見ると「超大作だと思って見に行ったら、そこらのB級映画程度だった」と文句を言っている人が、少なからずいるように思えてならない。だからこれは最初からB級映画なんだってば。
なるほど、誰もが誉める一流料亭に行ってファミレス並の料理が出てきたら、怒るのも無理はない。だがどう見てもファミレスという店で980円のランチを注文して「なぜダシに利尻昆布を使わない! こんなもので海原雄山の舌を満足させられるとでも思っているのか!」と怒ったら、そりゃ怒る方が馬鹿だ。万が一『ホワイトアウト』を一流料亭のハモ料理か何かと勘違いして見に行った人がいたら、それは勘違いしたあなたが悪いのだ。映画が悪いのではない。

事前にあまり情報を仕入れずに見に行った人でも、見始めてしばらくすれば「これって、まるっきり『ダイ・ハード』じゃん」と思うことだろう。まさにその通り。その時点で「ああ、そういうレヴェルの映画なのね」と頭を切り換えるのが利口な見方だ。大ヒット作をパクったB級映画など、玉石混淆この世に山ほどある。だがそのようなB級娯楽映画が、映画業界(産業)にとって欠くべからざるものであることを否定する人は、あまりいないだろう。B級だからダメだと言うことはない。B級映画はB級映画なりに楽しめばそれでいいのである。

良くも悪くも『ホワイトアウト』はそんなB級映画の一本に過ぎない。ついでに言えば、その点を割り切ってしまえば、この映画の不備もかなり気にならなくなるはずだ。この作品のプロットや各種のアイディアは、ほとんどB級アクションの王道なので、「なんでそうなるの?」という疑問の少なからぬ部分は「お約束だから」という一言で片づいてしまうからだ。

実に不思議なのは、そんなB級映画が日本映画の代表格に祭り上げられ、「やはりハリウッドには及ばない」と批判されたり、「ついにハリウッドに追いついた」という絶賛が出てきてしまうこと。
もしこの作品をそういう文脈で比較するなら、比較対照は『ダイ・ハード』ではない。『沈黙の戦艦』の方だろうに。日本のB級映画とハリウッドの超A級映画(『ダイ・ハード』はまさに「結果A級映画」だが)を比較して、日本映画はどうのハリウッド映画はこうのって、根本的に間違っているように思うぞ。
そこで同じ『ダイ・ハード』の真似っ子同士、『沈黙の戦艦』と『ホワイトアウト』で日米B級アクション決戦をしてみれば、人によって評価の違いはあろうが、とりあえず僕の中ではどちらも一長一短、まさにどっこいどっこいの勝負だと思う。不思議なのは、『ホワイトアウト』をまるで日本映画の代表格のように言い、「こんなものを誉めては日本映画に明日はない」といった言い方をする人たちは、『沈黙の戦艦』を見たときに、「これを誉めたらアメリカ映画に明日はない」と憤慨したのだろうか? そうでなければ筋が通らないと思うのだが、違うだろうか?
(もしあなたが『沈黙の戦艦』を高く評価しているなら、『ディープ・ブルー』でも何でもいいから、適当な物真似B級映画を当てはめて考えてくれ)


…そろそろ本音。なぜ僕がこの一連のホワイトアウト発言を不愉快に感じるかと言うと…この映画を見て、単純に「大作だから」「ヒットしているから」と言う理由で、「やはり日本映画は…」とか「日本映画引き合い発言」をする人々に対し「お前ら、日本映画日本映画って、一体何本の日本映画を見てものを言ってるんだ。ある程度日本映画を見ている人間なら、そもそも『ホワイトアウト』を日本映画の代表みたいに考えるわけないだろうが!」というインチキ臭さを感じるからだ。
例えばこの正月最大の「ヒット作」となった「超大作」『エンド・オブ・デイズ』を見て「これだからアメリカ映画は…」とか「いや〜、アメリカ映画ってこんな凄いものを作れるんだ」と言っている人間が周りにいたら、あなたは思わず白い目で見ないだろうか? 「こいつろくにアメリカ映画を見たことないんじゃないか?」と軽い軽蔑を覚えないだろうか? それとまったく同じことである。


そんなに「面白い日本映画」が見たいのなら、この夏は『ホワイトアウト』ではなく『顔』を見る…そんなことは議論の余地もないほど明白な話だ。あれだけ「今年の日本映画の最高傑作」と前評判が高く、事実娯楽映画としても圧倒的な面白さを誇る映画を差し置いて、なぜ『ホワイトアウト』を見るのだろう? わざわざ前評判の低い方を自分で選んでおいて、なぜ文句を言うのだろう? 評判の高い『顔』を見て、「日本映画は所詮こんなものか」と文句を言うなら話はわかる。だがわざわざクオリティの落ちる方を選んで、文句を言ってどうする? 逆に、もっと面白い映画があるのに、このレヴェルで「日本映画もついに…」などと絶賛してどうする。それは『エンド・オブ・デイズ』をアメリカ映画の代表格のようにみなして云々する人間と、一体何が違うんだ? 万が一「『顔』なんて映画知らない」という人がいたら、少なくともあなたに『ホワイトアウト』を日本映画云々の文脈で語る資格はない!
(この発言は、『顔』を見たくても見られない地方の方たちのことは完全に度外視しています。ごめんなさい)


う〜む、今読み返してみたら、『ホワイトアウト』が好きな人、嫌いな人、どちらも敵に回しかねない暴言の連続だ。でもいいや、本音だから。


(2000年8月初出/2001年1月改訂)

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