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03/17/2005

【映画】『吸血鬼ゴケミドロ』 最大の恐怖は人間のエゴイズム

この作品は、小学校の頃テレビで見たように記憶していた。だが今回見直してみると、「見たような、見ないような…」と自信がなくなってきた。佐藤肇監督は『キャプテン・ウルトラ』の監督だったので、同じようなテイストの作品はさんざん見ているはずだ。何か他の映画と混同しているのかもしれない。まあ見ていたとしても、四半世紀も昔の話だから、今回が初見のようなものだ。


その感想だが…「ムチャクチャおもしろい!\(^o^)/」


先ほど『キャプテン・ウルトラ』の名前を出したが、子供の頃ああいうものを見て育った人間には、涎が出そうな代物だ。いや、そんな趣味の問題を抜きにしても、これは必見の傑作だろう。

一言で内容を言うなら、和製『遊星からの物体X』だ。しかしこの作品の製作は1968年、ジョン・カーペンター版よりも遥か前だ。『物体X』の旧バージョンは未見なので断言は出来ないが、カーペンターも、この作品から少なからぬ影響を受けたのではないだろうか。

とにかく恐怖演出がうまい。特撮は今の目から見れば当然チャチなものだが、映画としての丹念な作りが、それを補って余りある。
特に素晴らしいのは、ほぼ全編にマゼンタ系のフィルターを使った撮影。これが非現実的なドラマを否が応にも盛り上げる。それをより強調する照明もすごい。ゴケミドロに襲われた人間の顔から血の気が失せていくところも、照明の効果だけでちゃんとそう見える。何気で構図が斜めになっていたりするところもうまい。一切無駄のない編集も秀逸だし、ヒュ〜ドドロドロというテルミン使用の伝統的恐怖音楽(笑)もやたらと盛り上がる。

ジャンルで言えばSF恐怖ものなのだが、一番の見所は、極限状況における人間のエゴイズムを容赦なく描いているところだ。客席の反応は実に興味深いものがあった。最初の内はみんな緊張して、まったく声がなかったのに、後半になって、登場人物がそれぞれのエゴをむき出しにしてくる辺りから、笑いが漏れるようになったのだ。そしてこの「笑い」というのが、「バカバカしくて笑ってしまう」「あまりにあり得ないことなので笑ってしまう」という、普段大井武蔵野館で聞くことの出来る笑いではなく、「あまりにもリアルで笑ってしまう」「笑わないことにはやってられない」というひきつった笑いなのだ(特撮のチャチさに対する失笑も時々混じったが)。

何がそんなにリアルなのか? なぜ笑わなくてはやってられないのか?

要するにみんな思い当たる節がある、ということだろう。つまり他人を犠牲にしてでも、自分だけは何とか助かろうとする連中の姿を見て、「自分もこういう状況に置かれたら、こんな風になるんだろうなあ」と思い、その事実をごまかすために笑うしかなくなるのだ。
「千載一遇のチャンスだから、ぜひ吸血の現場を見たい」と言い出す科学者、「外人なら何かと後腐れがないから、あの女を生け贄にしよう」と言い出す政治家。この辺りの描写で、特に笑いが漏れたのだが、それはこれらの発言が「決してあり得ないもの」ではなく、むしろ「あまりにもありそうなこと」だから笑いが漏れるのだろう。もしこれを「あり得ない」と思う人がいたら、その人はホロコーストでも731部隊でも何でもいいから、戦争中に行われた残虐行為について少し勉強すべきだろう。僕が「外人なら…」で特に思い出したのは、関東大震災における朝鮮人の虐殺だったが…。
そしてさらにすごいのは、生け贄にされかかった女までが、仕舞いには自分だけは生き残ろうと本性をむき出しにする展開。本当、この辺になるとひきつった笑いをもらす以外、どうしていいのかわからなくなってくる。

佐藤肇監督は、この傑作を最後に、25年以上も映画を撮れないまま、66歳で亡くなられたそうだ。せめてこの人が東映でなく(ゴケミドロは松竹作品)、特撮ものを得意とする東宝の監督だったら、もう少しは活躍の場を与えられたはずなのに…残念でならない。

日本映画史に残る異色の傑作『吸血鬼ゴケミドロ』。未見の方は、何とか機会を見つけてご覧になることをお薦めする。

(1997年4月初出/2001年1月改訂)

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