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03/01/2005

【音楽】クイーン『メイド・イン・ヘヴン』 癒されることのない傷

最近iPodでクイーンの『メイド・イン・ヘヴン』をよく聴いている。

もうかなり長い間聴いていなかったアルバムだ。正確に言えば「聴いていなかった」のではなく「聴けなかった」のだ。どんなに華やかに作られていても、そこにはフレディの死の影が色濃く出ていて、どうにも切なくて、悲しくて、聴く気になれなかったのだ。

それを聴き出したきっかけは、ある日突然頭の中で「マイ・ライフ・ハズ・ビーン・セイヴド」が鳴り響いたからだ。わずか3分15秒。あまりにも美しい部分と、どう考えても未完成なのではないかという部分が混在する曲だが、個人的にはクイーンの隠れた名曲の筆頭に位置する。「ライフ・イズ・リアル」に匹敵する名曲だ。

この曲におけるフレディの歌声は本当に素晴らしい。特別力の入った名唱ではない。むしろフレディがここまで肩の力を抜いて滋味溢れる優しい歌声を披露したことに驚かされる。その優しさが、極めて単純ながら、何の虚飾もない歌詞とあいまって胸に迫る。


   新聞を開けば
   どのページにも死のニュース
   ああ神よ 感謝します
   僕がここまで生きてこられたことに
 
    「My Life has Been Saved」Queen


さほど遠からぬ未来、自分の死が新聞に載るであろうことを知っていたフレディは、一体どんな気持ちでこの歌に向き合ったのだろう?  そしてこのような歌詞を、どうしてあそこまで優しく穏やかな声で歌い上げることが出来たのだろう?


この曲だけでなく、ほとんどの曲が今の自分の心境にぴったりとフィットする。

純粋に音楽的見地から言えば、追悼作品故にフレディの歌声を前面に出しすぎて、クイーンではなくフレディ+バックバンドという趣になっている点や、悲しみを華やかさに転化しようとしたアレンジが大げさになりすぎている嫌いはある。だが一度聴いただけで心を揺さぶられる名曲が何曲も収録されているという点においては、クイーンの全アルバムの中でもトップクラスに位置する作品だろう。

「レット・ミー・リヴ」は、「サムバディ・トゥ・ラヴ」を彷彿とさせる、ゴスペルタッチの曲。おそらくフレディが全部歌いきる前に逝ったせいだろう。フレディ、ロジャー、ブライアンの3人がリードヴォーカルを分け合うのだが、それが他のどの曲にもない、強い感動を与えてくれる。
フレディ・マーキュリー・トリビュートでも歌われたブライアンの名曲「トゥー・マッチ・ラヴ・ウィル・キル・ユー」。恋の痛みを率直につづった歌詞、美しいメロディー、そしてフレディの歌声…何度聴いても胸が一杯になる。「愛しすぎれば身を滅ぼすことになる」…そんな単純な言葉が、なぜこんなにもリアリティを帯びて響くのだろう。


フレディがこの世を去って、すでに13年以上がたつ。

だがフレディの死の悲しみは、今も癒えることがない。

それは今でも自分が許せないからだ。

フレディの生前に作られた最後のアルバム『イニュエンドゥ』は、あとで振り返ってみれば、ほとんど全編が遺言のようなメッセージに満たされている。考えてみれば、ロック史上「これが遺作になるだろう」と意識して作られたアルバムは極めて希なわけで、自らの死をこれほどわかりやすい形で暗示した作品は皆無と言ってもいい。

それほどまでに明白なメッセージを、なぜ自分はあの時理解できなかったのか?

もちろん全編に漂うもの悲しさ、悲壮感はすぐに感じ取った。
だがその悲しさが一体どこから来るものか理解できなかった。

いや、理解できなかったならまだいい。
理解しようという努力を、明らかに怠っていたのだ。

長年聴き続け、一番好きなロックバンドだと公言し、その音楽性やメッセージをすっかりわかったような気になっていたクイーン、そしてフレディ・マーキュリー…

だが最後の、そして最も重要なメッセージを理解できずに、何がファンだ! 思い上がりも甚だしい!!

僕はその悔しさを一生忘れないだろう。
自分を許す日も決して来ないだろう。

だからこそフレディの死は、いつまでたっても「過去」とはなりえないのだ。


死はいずれ誰にも訪れる。

だが最も美しいもの、最も愛するものが死ぬのを見ることは、ある意味自分自身の死よりも辛い。

自分がその死に対して何の意味も持ちえず、何の救いにもなれぬのだと思い知らされた時は、なおさらだ。


(2005年2月初出)

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