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03/06/2005

【演劇】ブラボーカンパニー「ソビエト」 2005.3.4

ブラボーカンパニー「ソビエト」(中野ザ・ポケット)


2005年3月4日(金)


過去にブラボーカンパニーの公演を見たのは一度だけ。2004年にパルテノン多摩の小劇場フェスティバルで上演された「サンダーバードでぶっ飛ばせ!!」だ。
これは本当に面白かった。映画『レザボア・ドッグス』のパロディという構成を取りながら、他にもあらゆるネタやパロディを詰め込み、観客を思う存分笑わせながら、最後にはただのお笑いを超えた感動を与えてくれた。
とりわけ、最初はまったく無関係に見えた幾つものパートが、時空間がバラバラにされていただけで、実はちゃんと一つの物語としてつながっていることが明らかになっていくところは鳥肌もの。「でもさすがにあのパートだけは、直接関係ない息抜きのコントだったのだろう」と思っていたネタが、最後の最後にジグソーパズルの最後の一片としてカチッと音を立ててはまった時の快感たるや、思わず立ち上がって拍手をしたくなったほどだ。「娯楽」として、これ以上面白い芝居は滅多にないことだろう。しかもその娯楽を、金をかけたセットなど使わず、練りに練られた脚本と役者たちのキャラだけで実現しているところが、さらに好感度を増していた。

だがそれによって、ブラボーカンパニが一挙に自分のお気に入り劇団になったかといえば、それは違う。なぜなら「サンダーバードでぶっ飛ばせ!!」はあまりにも巧くできすぎていた。それ故に、これほどのハイクオリティを常に維持しているとは考えられなかった。早い話が、この劇団は「サンダーバードでぶっ飛ばせ!!」だけの一発屋ではないかという疑念が消えなかったのだ。


そんなわけで、初めてのリアルタイム観劇(パル多摩の「サンダーバードでぶっ飛ばせ!!」は再演)、それほど期待していたわけではなかった。

結論から言えば、「ソビエト」は、やはり「サンダーバードでぶっ飛ばせ!!」に及ばなかった。

しかしこの作品によって、ブラボーカンパニーを堂々とお気に入り劇団の一つに数えられるようになったのも確かだ。


最初にちょっとしたイントロがあり、最後に種明かし的なエピローグがあるが、基本的にはワンセット一幕だけのシチュエーションコメディだ。舞台は携帯も通じない山の中のドライブイン。そこで出会った数人の男たちが殺人事件に出くわして右往左往する姿が描かれる。
クリスティの「そして誰もいなくなった」を下敷きに、あらゆるミステリーやテレビ番組、漫画などのパロディが詰め込まれ、大いに笑わせてくれる。しかも「わかる人だけわかればいい」というマニアックさはなく、うるさくならない程度にネタ元について解説フォローをする心配りには頭が下がるほどだ。

とは言え「サンダーバードでぶっ飛ばせ!!」に比べると、やはりゆるい。後半ネタが尽きた感じで急に笑いが失速気味になるし、台詞がよく聞き取れないところもある。同じシーンを再現するところが何回かあるので、後になって「ああ、こう言っていたのか」と納得することもしばしば。いくら面白い台詞を書いても、観客にきちんと伝わらないのでは話になるまい。また今回はただ面白いだけで、前回のようにドラマとしての心地よい感動までは得られなかった。

だがこの作品によって、ようやくブラボーカンパニーの個性や目指しているものがはっきりと理解できた。

この劇団の芝居には、見る人を楽しませようという気概が満ち溢れている。見る人を思い切り笑わせ、楽しませ、それによって自分たちも楽しもうという、楽天的な理想が感じられる。
それが「サンダーバードでぶっ飛ばせ!!」のように極端にうまくいく場合もあれば、今回のようになかなか面白かったというレヴェルで終わることもあるだろう。だがどちらも目指すところは同じであり、一回ごとの出来不出来はそれほど重要ではない。もう三十過ぎた男たちが、学生なみの楽天的な理想を信じ、それを実現しようと奮闘している姿が何よりも感動的なのだ。

作・演出の福田雄一は「スマスマ」や「笑っていいとも」などを手がけている放送作家だそうだ。パル多摩公演の時のチラシか何かで「僕の書くものは、テレビ界では演劇的すぎると文句を言われ、演劇界ではテレビ的すぎると文句を言われます。一体僕にどうしろと言うのでしょう?」というような発言を読んだ記憶がある。
確かにブラボーカンパニーの芝居は、見ようによってはテレビのヴァラエティの拡大版と言えなくもない。そういう意味で、この劇団の立ち位置は少し中途半端だ。娯楽として高いクオリティを持ちながら、あまりブレイクしていない理由も、そこにあるのだろう。
だがテレビのヴァラエティ番組で、ブラボーカンパニーの芝居に見られる「熱さ」「青臭さ」まで描くことができるものだろうか? 個人的にはその手の番組をほとんど見ないので(と言うか最近はテレビ自体ほとんど見ないので)はっきりとは言えないが、多分無理だろう。テレビだけやっていた方が明らかに実入りはいいはずなのに、福田氏があえて金になりそうもない芝居を続けているのは、そんな溢れる思いを何かの形で表現せずにはいられないからではないのか。大体テレビなんてものは…以下自粛。

役者たちも皆キャラが立っていて素晴らしい。「サンダーバードでぶっ飛ばせ!!」で最も印象に残る芝居を見せてくれたシャクレーヌこと鎌倉太郎が欠席なのは返す返すも残念だが、その穴を埋めるように、他の人たちが頑張っているので不満は感じない。特に目立つのは山本泰弘だが、すべての役者にそれぞれの見せ場が与えられていて、役者もそれにしっかり応えている。そういった作家と役者の信頼関係は、見ているだけで美しい。

次回は10月、池袋の芸術劇場だ。あそこは芝居のハコとしてはあまり好きではないのだが、もちろん行くことになるだろう。この馬鹿な男たちに再会できるのが、とても楽しみだ。


そう、僕はこの馬鹿な男どもが、抱きしめたくなるほど大好きだ。


普通なら、男しかいないむさ苦しい劇団など見る気も起きないのだが、こいつらだけは例外だ。


しかし…ついに最後まで「ソビエト」というタイトルの意味はわからず仕舞いだった(笑)。


                 *


最近演劇評が長くなっている。このままいくと、一時の映画評のように

 「次第に全て書き尽くさないと気が済まなくなる」
→「書くのに時間とエネルギーがかかりすぎるようになる」
→「結果、ちょっと忙しくなると書くこと自体をやめてしまう」

という悪循環に陥りそうだ。次回から、もう少し短くしよう。

(2005年3月初出)

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