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03/03/2005

【演劇】劇団インベーダーじじい「眠れない都会の夜に眠るために」 2005.3.2

劇団インベーダーじじい「眠れない都会の夜に眠るために」
(ベニサンピット)


2005年3月2日(水)

劇団インベーダーじじい…何度聞いても凄い劇団名だ。シリアスな評価を受けるのを最初から拒否したかのような、やさぐれた匂いが漂う。

その割には、この劇団妙に評判がいい。昨年の公演は、えんぺの一行レビューでかなりの高評価を得ていたため、次に機会があれば見ようと思っていた。
ところが新作の公演場所は両国のベニサンピット。ここは自宅から遠すぎ。どうしたものかと悩んでいると、ひょんなきっかけで出演者の一人である若狭ひろみさんから「ぜひ見に来てください」とメールをいただいてしまった。こうなったら見にいくしかないだろうと重い腰を上げた。

初めて行くベニサンピット。会社から両国までは電車で10分程度なので、実は意外と近い。家と方向が正反対なので心理的には遠いが、実際にはそれほどでもない。しかし問題は両国に着いてからだ。これが駅から遠いのだ。途中に店らしい店もないからよけい遠く感じる。
しかも到着してみれば、周りには本当に何もない。住宅と小さな町工場のようなものばかり。こまばアゴラ並みの何も無さだ。
しかも建物がギョッとするほどぼろい。詳しいことは何も知らないが、これは明らかに倉庫か工場を改造したものだろう。トイレも外にある。念のため行っておきたかっただけなので、トイレの前の行列を見て入るのをやめたが、どうも男女共用らしい。
まあ一から十までお洒落という言葉からは100万光年の彼方にある環境だ。同じくらいどうしようもない設備でも、こまばアゴラの方が、隣にコンビニがある分まだマシかも。しかしこまばアゴラもあのトイレだけは何とかならないものか。と言うか、私はあの設計ミスとしか思えないトイレに、もう二度と入るつもりはないのだが。


劇場の話が長くなった。

さて、結果的に私は一番前の真ん中に座ることになった。基本的に小劇場ではいつもそうしているからだ。大きな舞台の場合は、あまり前に行くと全体を把握しきれない場合もあるが、小さな所では、役者の唾が飛んでくるくらい近くで見ていたい。何度も書いているように、私は映画育ちなため、原則的に「映画では味わえないもの」を演劇に求めている。映画館の最前列で映画を見ても決して役者の唾は飛んでこない。だから演劇では、最前列で見ることで、役者の唾を浴びたり、小道具が飛んできたり、紙吹雪を思い切りかぶったり(先日の『城』では凄いことになった)といった臨場感を味わいたい。芝居の本質とは直接関係ないかもしれないが、そういうことも私にとっては演劇を見る楽しみの一つなのだ。だからと言って、役者は私にわざと唾を吐きかけたりしないように。

…とは言え、今回はちょっと辛かった。
何しろ左側は通路で誰もいない。しかも客はかなり入っていたのに、なぜか私の右側二つには誰も座ろうとしない(笑)。つまり最前列のど真ん中にポツンと一人置かれたような状況。しかも客席はかなり急傾斜の雛壇式で最前列と舞台は限りなく接しているため、舞台を見る人は必然的に私の姿を視界に捉えることになる。さすがにこの状況はちと辛い。
以前池袋の芸術劇場で村治佳織のコンサートを見た時にも同じような状況を経験した。村治さんを至近距離で見られるのは嬉しいが(彼女、ギターを弾く時ちょっと変な顔になるところが可愛い)、私の姿は、ほぼ全観客の視界の端っこに確実に映りこんでいる。体を動かそうが、頭をかこうが、居眠りしようが、すべてわかってしまう。しかも客電が落ちるロックやジャズ、あるいは演劇と違って、客席も舞台と同じくらい明るいから私の姿はすべて丸見え。こうなるとさすがに動くことが出来ない。せめてジャズだったら適当にのって体を動かしていても誰も気にしないだろうが、クラシックのコンサート、それも室内楽だからじっと静かに観賞していなくてはならない。終わった時にはグッタリ疲れていたのをよく覚えている。

何だかちっとも本編の話にならない(笑)。

本編の前にquailというバンドが2曲ほどライヴをやる。どういう関係か知らないが、ヴォーカルの子が、出演者の一人である北村美樹という子の写真集を宣伝していたから、まあ事務所がどうのこうの、きっと大人の事情があるのだろう。音楽はいたって普通。はっきり言って、今のままでブレイクすることはないだろう。

さて、そのミニライヴが終わるとすぐに本編の開始。


ストーリーは、わかったようなわからないような不思議なもの。ロック、青春、コメディ、エログロ、テロリズム、漫才…何でもあり。それらがごちゃ混ぜになったまま、最後まで収束されることなく、これまた何がどうなったのかよくわからないラストへとなだれ込む。実験的な作風ではなく、明確なストーリーはあるのだが、話が進めば進むほどストーリーは混迷の度を深めていく。

ではそれがつまらないかと言えば、妙に面白い。精緻な劇構造から生み出される感動などは望むべくもないが、わけのわからん混乱した話の中から原初的なエネルギーがはっきりと伝わってくる。一言で言えば「熱い」。音楽は実際にはそれほど流れないのだが、なるほど確かにこの熱さはロックの初期衝動によく似ている。無目的で、戦略もなく、でも自分の燃えるような思いを歌にせずにはいられない…そんなロックンロール的なエネルギーが、この作品には溢れている。

「良い作品だったか」と問われると思わず答に窮するが、「熱い作品だったか」「見て面白かったか」と問われれば、自信を持ってイエスと答えよう。
問題は今現在の完成度ではない。ここには未来に開かれた若々しい可能性が秘められていて、それに触れるだけで楽しくなってくるのだ。

ただ非常に残念だったのは、演じる側の熱気に対し、客席がそれに応えていなかったこと。今のは絶対に笑うところだろうという場面でも、ほとんど笑いが起きない。その反応の無さに役者が少し戸惑う部分も見受けられた(そんな細かい部分まで観察できるのも、最前列の醍醐味)。
多分観客の多くは、このお話をどう受け止めて良いのかわからず、笑っていいいのかどうか、最後まで迷っていたのではないだろうか? そういう意味では失敗作だとも言える。だがそのような壁は、ちょっとしたきっかけで簡単に崩れさるもの。この熱さをキープしていけば、インベーダーじじい(しかし何度聞いてもすごい名前だ)がかなりの人気劇団になることは間違いないと思う。


主演のあんじは、演技はまだまだ固いが、スリムなプロポーションと可愛らしい笑顔がとても魅力的だ。特に最後のステージシーンでの動きは素晴らしい。
この子のことは何も知らなかったので帰ってから調べたのだが、昔雑誌などでモデルをやっていた子か。そう言えば記憶の片隅に、その名前が残っている。確か父親がストーンズの「悲しみのアンジー」が好きで、そこから「あんじ」と名付けられた子だな(そう、「あんじ」って本名なのだ)。でもその話を聞いたのは、かなり前の事じゃなかったっけ??
そこでさらに調べてみると公式ページがある。誕生日は1975年8月30日…

は?
 
1975年??(思わず目をゴシゴシこする) 

ちょっと待て、1975年生まれって、つまり今年で30歳????!!!! 

てっきり20歳過ぎの新人だと思ってたよ!

あれで今年30歳??? 

凄い…と言うか、ある意味素晴らしい…

http://www.angietheearth.com/index.html

他の役者では、(決してメールをもらったから言うわけではなく)若狭ひろみさんが図抜けて凄い。「こんなことやってたら、あんた嫁に行けないよ」と思わず心配したくなる、恥も外聞もない捨て身の演技。いや、まだ嫁入り前かどうか知らないけど。


そんなわけで、噂のインベーダーじじい初体験は十分に満足できるものだった。次回作もぜひ見てみたい。ただし次はベニサンピットはやめてね(笑)。


http://www.inveider.com/index2.htm


(2005年3月初出)

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