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03/01/2005

【演劇】ク・ナウカ「僕らが非情の大河をくだる時」 2005.2.19

ク・ナウカ「僕らが非情の大河をくだる時」(ザ・スズナリ)

2005年2月19日(土)


朝から仕事。それでも何とか13時10分に終わらせ下北沢のスズナリへ。
氷雨が間断なく降り注ぐ2月の寒い一日。やはりク・ナウカには
悪天候を呼ぶ何かが取り憑いてるのではないか?
そんな天気だから客も少ないだろうと思いきや、なぜか補助席も出る
超満員。高い年齢層が目だったが、まさか初演を見ている人たちじゃ
ないだろうな。


さて…

ごめんなさい、私この芝居をまったく楽しむことが出来ませんでした。


解説を読むと宮城さんのやりたかったことは何となくわかる。でもこの
上演では、正直「それほどの戯曲、それほどの言葉なのか?」と思わず
にはいられなかった。
いかにも1972年のアングラ劇という匂いはする。背景に連合赤軍事件が
あると言うのも、何となくわかる。蜷川幸雄演出/蟹江敬三・石橋蓮司
出演の初演が目に浮かぶようで、当時の上演はさぞかしリアリティが
あったことだろう。
宮城さんとしては、その時代性を超える普遍的な価値をこの作品に
見いだし、それを仲田恭子演出+ク・ナウカ俳優で33年後の今に蘇生
させたかったようだが、残念ながらそこには、いかなるリアリティも
面白さも見いだすことが出来なかった。これは中野真希以外の二人の
役者の弱さがかなり影響している。いかに言葉が良かったとしても、
それを伝える「声」に力がないのでは、話にならない。

そもそも宮城聡の企画+ク・ナウカの役者ではあるが、脚本も演出も
ク・ナウカの人ではないため、最後まで「ク・ナウカの芝居であって
ク・ナウカの芝居ではない」という印象がつきまとっていた。もちろん
言行一致の普通の演劇スタイル。最近本格的な公演においても、ク・
ナウカならではの人間浄瑠璃スタイルが減ってきて、あのスタイルに
衝撃を受けてファンになった人間としては寂しい限りだ。

また、これは酷な言い方になるが、やはりこの劇団、美加理さん、大高
さん、阿部さん、そしてギリギリ吉植さん(笑)のうち、最低誰か一人は
出演していないとどうにも華がない。中野真希さんの演技力は認めるが、
残念ながら観客を「魅せる」という意味では、上記の人たちには遠く
及ばない。
せめて若手で一押しの杉山夏美が出ていればまだしも、最近姿を見かけ
ないし… 女優陣は美人が揃っていることもあり、杉山を筆頭にそれなりの
魅力を持っているが、どうも若手の男優で注目すべき人を見かけない(足を
引っ張っているような人は見かける)。人数が多い割にこれではなあ…と
思ってしまう。

また左の壁にディスプレイがかけられていて4分割のマルチ映像が出るの
だが、あの位置ではあまり効果をあげているとは言い難かった。僕の席は
真ん中の少し前方、気持ち右寄りだったので何の問題もなかったが、かなり
の人たちはディスプレイがほとんど見えなかっただろう。また僕のところ
からでも、ディスプレイを見るか舞台の生の役者を見るかの二者択一になる。
いろいろな制約があったのかもしれないが、あれが素直に舞台正面上に設置
されていて、下で展開している演技を異化するような方向に作用していれば、
ちょっと面白いものになったのに。残念である。

思わず次の「山の巨人たち」を見る気が萎えてしまったが、こちらは大高
さんが主演。しかも宮城さん自身が出演するということなので、まあ少しは
期待してみるか…


ク・ナウカの今年の主要公演は、夏に「王女メディア」の再演、秋に新作
発表だそうだ。少なくとも「メディア」は美加理さんの主演だろう。伝説の
美加理メディア、こちらは相当に楽しみである。

(2005年2月初出)

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Comments

TBありがとうございます。
美加理さんのメディア、楽しみですね。

Posted by: しのぶ | 03/14/2005 18:14

どうも。しのぶさんのサイトは以前から時々覗かせていただいていました。
今後も共通の鑑賞作品があったらTBさせていただくと思いますので、よろしくお願いいたします。

Posted by: ぼのぼの | 03/14/2005 23:36

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Tracked on 03/14/2005 18:12

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